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The Lemon Twigs 2ndアルバム「Go To School」の解説・感想

今回は、私が大好きなアメリカの若手兄弟バンド「The Lemon Twigs (ザ・レモン・ツイッグス)」の、2ndアルバム「Go To School」の曲解説と感想を書いていきます。

前回に続き、The Lemon Twigs のアルバム紹介第2弾です!

 

「まずThe Lemon Twigsってどんなバンドなの?」と思った方は、ぜひこちらの記事も併せて読んでみてください!

 

 

Go to School のジャケット

Go To Schoolの全体的な感想

「人間に、人間として育てられたチンパンジーの男の子Shane (シェイン)が学校に行く、というミュージカル風アルバム」というテーマが既にあるように、全体的に本当に1つのミュージカルを鑑賞しているかのような感覚にさせてくれる作品です。16曲収録で59分と長めのアルバムですが、あっという間に聴き終わってしまいました。

前回のアルバム「Do Hollywood」とは全くテイストが違い、「The Lemon Twigsにこんな側面もあるんだ!」と、彼らの新たな引き出しを見せてもらえる1作です。

ちなみに、The Lemon Twigsの2人が1曲ずつ解説している動画がYouTubeにあるので、英語ですが興味がある方は見てみてください!リンクはこちら

 

曲解説・感想

それでは早速、1曲1曲の解説・感想を書いていきます!YouTubeに全曲動画があるので、ぜひそちらから聴いてみてくださいね!

 

Never in My Arms, Always in My Heart

youtu.be

弟Michaelがボーカル担当。彼によると、この曲のインスピレーションを受けたきっかけは、飛行機の中でたまたま耳にした見知らぬ人達の会話だったそうです。会話の女性が、腕にこの曲名の言葉をタトゥーとして彫っていて、Michaelが曲にしようと思ったと語っています。

曲の内容は「流産」と悲しいテーマで、曲名の訳が「あなたは私の腕の中にはいないけれど、心の中にはいつもいる」となっています。

流産を経験した女性(このアルバムの物語では、主人公のチンパンジーShaneの母親)が「自分の息をあなた(亡くなった子ども)にあげられたらどれだけ良かったか」と、苦しい胸の内を語っています。

曲調は「ロック!」という感じでかっこいいです。PVではバーのような所でMichaelが歩きながら歌うところが見られます。

 

The Student Becomes The Teacher

https://youtu.be/vNYZhCxJQfQ

 youtu.be

こちらもMichaelがボーカル担当。チンパンジーのShaneがテレビ番組の影響から、ある日「学校に行きたい」と思うようになり、そのことを(人間の)父親に打ち明けます。しかし、父親は断固反対。家から絶対に出るなと言いますが、Shaneには「自分が死んだ時に、周りの人たちに自分のことを覚えていてほしい」という強い気持ちがあります。

数回聴いただけではメロディーはあまり頭に残らないですが、何となくまた聴きたくなる曲だなと感じました。

 

Rock Dreams

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この曲は、The Lemon Twigs2人の実の母親であるSusan Hall (スーザン・ホール)がメインで歌っています。Shaneの父親役としては、アメリカの大物歌手Todd Rungren (トッド・ラングレン)がボーカルを務めています。

曲中では、Shaneを育てた人間の父親と母親が、彼を引き取った経緯などの昔話を回想しており、歌詞から母親は教師だったと分かります。彼女は、かつてロック歌手になりたいという夢を持っていましたが、夢破れて普通の人として生きていました。その中で、Shaneに自身の夢を託し彼の新たな学校生活に期待しています。

曲調はミュージカル+ロックという感じで、イントロや間奏のギターの音が痺れます。

 

The Lesson

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こちらは、兄Brianがボーカル担当。個人的にこのアルバムの中で、1番最初に好きになった曲です。オーケストラの1曲を聴いているかのような壮大で優雅なメロディーラインが特徴的です。

この曲では、Shaneの人生観であるアンチテーゼについて語られています。彼は、学校でただただ先生の話を聞いているだけの授業の中で、首を縦に振っている他の生徒たちを見て違和感を覚えます。

Brianの解説によると、人生を抽象的に俯瞰(ふかん)した曲であり、サビでは、「あと何年かしたら、僕たちは雨雲となって消え失せてしまうけれど、嘘でもいいから僕たちの体が海になると信じよう。そうすれば心配なんてないだろう?」と歌っています。

 

Small Victories

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思わずノリたくなるようなイントロ、目まぐるしく変わるリズムが輝く一曲です。Brianがボーカル担当。

サビの歌詞は、Shaneが憎しみやいじめが蔓延する学校の中で見出した、彼なりのポジティブな人生観が語られています。

Brianによると、速いペースのまくし立てるようなメロディーは、ポップシンガーのGilbert O’Sullivan (ギルバート・オサリバン)からインスピレーションを得たそうです。

個人的に初めて聴いた時はあまりピンと来ませんでしたが、YouTubeでライブバージョンを聴いた時に「かっこいい曲だな」と感じ、今ではかなり好きでよく聴いています。

 

Wonderin’ Ways

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Brianがボーカル担当。全体的に穏やかで可愛い感じのメロディーの曲です。私は、こういう曲調の曲は結構好みです。

元々は、Brianが昔好きだった人について作った曲だそうですが、それがShaneのDaisy (デイジー)という女の子に対する恋愛感情についても当てはまると思い、このアルバムの収録曲となったと語っています。Shaneはその恋愛は片思いで終わると思っていますが、相手についていつも思いを巡らせている、といった内容です。

 

The Bully

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Brianがボーカル担当。この曲は、キーボードやギターのアルペジオが美しく、メロディーだけ聴けば幸せなバイブを感じます。サビはミュージカル風のアレンジで、私がこの曲を聴いてパッと頭に思い浮かんだ邦楽アーティストは、スピッツ (初期)や、the pillowsでした。

しかしそんなメロディーとは裏腹に、本アルバムで1番残酷で、暗いオーラを纏った歌詞がインパクト大です。

Shaneのいじめっ子であるRobert Jr (ロバートジュニア).が、自身が父親から精神的苦痛を味わわされた、暗い過去について涙ながらに思い返している、という内容の歌詞です。

間奏のノリのいいテーマパークのようなメロディーが詞のネガティブさと真逆で、それがこの曲全体を、どこか不気味にしているなと感じました。

 

Lonely

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Michaelがボーカルを担当しており、彼が15歳の時に書いた曲だそうです。学校でクラスメイト達が自分の目の前で遊びに行こうとしているのを見て、孤独を感じたことから書いた曲だそうです。

「時々自分が周りの友達と、どこかずれている気がする」や、「誰かが自分のことを気に掛けてくれたらいいのに」という歌詞がメロディーとマッチしていて切なさを感じます。サビの「I know that I’m not funny (僕は面白い人じゃないっていうのは分かっている)」の「funny」の歌い方が独特でクセになります。

 

Queen of My School

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Michaelがボーカル担当。曲全体から「どこか昔懐かしいロックンロール」という印象を受けます。ライブで聴いたら、かなりかっこよさそうな曲です。

「Wonderin’ Ways」でも歌われた、ShaneのDaisyに対する恋愛の顛末について歌われています。

Daisyは学校で誰もが憧れるプリンセス的な存在で、そんな彼女がある日の授業でShaneのに声を掛けます。Shaneは舞い上がり、2人は一緒に遊んだりするような仲になりますが、結果的にShaneはただ遊ばれていただけだった、という悲しい結末を迎えてしまいます。

 

Never Know

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イントロは、まるで遊園地のテーマソングを聴いているかのような印象ですが、すぐにイメージが変わるメロディーが面白いです。「Never know〜♪」が繰り返される、サビのメロディーラインがクセになります。背後で動くベースラインもかっこいいです。

曲中でShaneの父親役として歌っているのは、「Rock Dreams」でも登場したアメリカの大物歌手Todd Rungren (トッド・ラングレン)で、母親役はThe Lemon Twigs2人の実の母親であるSusan Hallです。

この曲では、Shaneが自身の生い立ちを両親から聞かされます。学校生活が彼に悪影響を与えていると考えた両親は、彼の生い立ちを話し聞かせること彼の思考を変えられるのでは、と思います。しかし、それは逆効果でShaneはより孤立感を感じてしまう、という内容です。

 

Born Wrong/Heart Song

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Michaelがボーカル担当ですが、書いたのはBrianだそうです。インタビュー動画でBrianは、Michaelの歌い方について絶賛していました。

「Never Know」の歌詞内容に続く一曲で、Shaneが「自分は他の人たちとはどこか違うと分かっていた」、「Shaneとしての人生は終わった」と、自身が感じる心の痛みや苦しみを吐き出す曲です。

ドラマチックなブロードウェイ風のメロディーが印象的で、Brianが絶賛する通り、Michaelの「負の感情」を聴き手に伝える歌い方は流石だなと思います。

 

The Fire

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Michaelがボーカル担当。タイトルが「火事」とあるように、Shaneが通う学校で起こった火事についての曲です (なんと100名もの人が亡くなったそうです)。

このアルバムのストーリー上でターニングポイントの一つとなるトラック。

イントロから明るい曲調ですが、かなりネガティブな歌詞です。AメロではShaneがいじめられている場面が描写され、その後突然火事が発生します。Shaneは「誰からも求められない人生って辛い」と、何度も胸の内を明かしています。

 

Home of a Heart (The Woods)

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Brianがボーカル担当。壮大なオーケストラ調の曲です。

「寂しくて涙が溢れる」、「心の居場所が無いままの空っぽの穴」、「皆に拒絶されているような僕を、何が励ましてくれるのだろう」などという歌詞にあるように、美しいメロディーラインとは裏腹に悲しくてどこか冷めたようなShaneの心情を歌った曲です。詩的表現や結構難しい言葉が使われている歌詞なので、何度か聴かないと理解するのが難しかったです。

 

This is My Tree

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Michaelがボーカル担当。

メロディー的には前曲の「Home of a Heart (The Woods)」とは対照的で「ロック!」という感じです。

数々の辛い出来事の後、森に逃げたShaneの野生的でシンプルな生活が描写されています。「これは僕だけの木だから近づくな」と、彼の強い気持ちが繰り返し歌われています。

 

If You Give Enough

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兄Brianの声の良さが最大限発揮された、綺麗な歌声が魅力的です。所々鳴るバイオリンやイントロのピアノの音色が良いですね。

Brianによると、このアルバムのストーリーの教訓となる曲だそうです。「人生で大切なのは他人から受け取ることではなく、自分が(愛などを)他人に与えることだ」という教えを歌っています。

 

Go to School

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Michaelがメインボーカル担当で、ローボーカルはMichaelとBrianの実の父親が歌っています。このアルバムの1曲目「Never in My Arms, Always in My Heart」の歌詞がひたすら繰り返される、とても短くてノリのいい曲です。

Michaelによると、この曲は物語の結末というよりは、ボーナストラックという感じで、マスタリングの2日前に完成させた曲だそうです。

 

最後に

いかがでしたか?少し長い記事になってしまいました。

ブロードウェイ風の壮大な曲からロックンロール全開の曲まで、The Lemon Twigsの広いふり幅を見せてもらえるアルバムでした。

いつか、このアルバムを基にしたミュージカルを作ってほしいですね!もしそれが実現したら絶対見に見に行きたいです!

The Lemon Twigsに限らず、「この洋楽の和訳を知りたい!」などのリクエストがあれば、ぜひコメントで教えてくださいね!彼らのファーストアルバム「Do Hollywood」にも興味がある方は、こちらのアルバム解説・感想記事もご覧ください!

次はThe Lemon Twigs の3rdアルバム「Songs for the General Public」の曲解説・感想について書こうと思います!また、今後は他の日本ではあまりメジャーではない洋楽アーティストの紹介 (FUR, Ricky Montgomeryなど) もしていこうと思います!